留学ビザから就労ビザの変更
目次
はじめに
アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。
「日本の大学で学んだ優秀な留学生に、卒業後も当社で活躍してほしい」
近年、企業のグローバル化や人材不足を背景に、このように考える経営者や人事担当者様が急増しています。しかし、留学生を新卒で採用する際には、必ず「留学ビザ」から「就労ビザ」への変更という、専門的で複雑な手続きが伴います。
「内定は出したものの、ビザ手続きの流れが全く分からない」
「どのような書類を準備すれば、許可が下りるのだろうか?」
「万が一、不許可になった場合、内定は取り消さなければならないのか?」
こうしたお悩みや不安は、私たちが日々受けるご相談の中でも非常に多いものです。ビザの変更手続きを正しく理解せず進めてしまうと、申請が不許可になるだけでなく、採用計画全体に大きな遅れや見直しが生じるリスクさえあります。
この記事では、ビザ申請の専門家である行政書士として、留学生が卒業後に日本で働くために不可欠な「在留資格変更許可申請」について、その全体像から具体的な手続き、審査の重要ポイント、そして企業側が準備すべきことまで、あらゆる角度から網羅的に解説します。
この記事を最後までお読みいただくことで、ビザ変更手続きに関する漠然とした不安が解消され、自信を持って留学生の採用活動を進めるための、明確な道筋が見えるようになるはずです。
結論ファースト!留学から就労へのビザ変更 3つの最重要ポイント
詳細な解説に入る前に、まずは留学ビザから就労ビザへの変更を成功させるために、絶対に押さえておくべき3つの最重要ポイントを理解しましょう。
- ポイント①:学歴と業務内容の「関連性」が最大の審査基準
これが最も重要です。出入国在留管理庁(以下、入管)は、「大学や専門学校で学んだ専門知識と、就職先で担当する業務内容に一貫性があるか」を最も厳しく審査します。この関連性を合理的に説明できるかが、許可・不許可を分ける最大の鍵となります。 - ポイント②:申請の「タイミング」が採用スケジュールを左右する
在学中に内定が出た場合、卒業を待たずして卒業年の前年12月1日から申請が可能です。春先の申請は大変混み合うため、1日でも早く申請することが、4月のスムーズな入社を実現するために不可欠です。卒業後に就職活動を続ける場合は、別のビザへの変更が必要になるなど、状況によって流れが全く異なります。 - ポイント③:「留学生本人」と「受入れ企業」双方が審査対象である
審査は留学生の学歴や素行だけを見るものではありません。採用する企業側の「事業の安定性・継続性」や「その留学生を雇用する必要性」も同等に厳しく審査されます。特に中小企業や新設法人の場合は、より詳細な資料提出が求められます。
この3つのポイントを念頭に置きながら、以下の詳細な解説を読み進めてください。
なぜビザ変更が必要?「留学ビザ」と「就労ビザ」の根本的な違い
そもそも、なぜビザの変更が必要なのでしょうか。それは、「留学」と「就労」という在留資格が、日本で行うことのできる活動を全く異なるものとして定めているからです。
- 留学ビザ(在留資格「留学」)
その名の通り、日本の教育機関(大学、専門学校、日本語学校など)で教育を受けることを目的とした在留資格です。就労は本来の目的ではないため、原則として認められていません。ただし、「資格外活動許可」を別途取得することで、学業に支障のない範囲、具体的には週28時間以内(長期休暇中は1日8時間以内)でのアルバ-イトが例外的に認められています。正社員としてフルタイムで働くことは、この規定に違反するため不可能です。 - 就労ビザ(代表例:在留資格「技術・人文知識・国際業務」)
日本の公私の機関との契約に基づき、専門的な知識や技術を活かした業務に従事するための在留資格です。いわゆる「ホワイトカラー」向けのビザであり、留学生が卒業後に就職する場合、その多くがこの「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更を目指すことになります。このビザを取得して初めて、企業で正社員として給与を得て働くことが法的に可能となります。
つまり、「学生」という身分から「社会人・職業人」という身分へ変わるために、その活動内容に合わせた在留資格へ変更する手続きが、この「在留資格変更許可申請」なのです。
いつ動くべきか?申請のタイミングと手続きの全体像
ビザ変更の手続きは、内定が出るタイミングによって進め方が大きく異なります。
ケース1:在学中に内定が決まった場合
最も一般的でスムーズなパターンです。
- 申請可能な時期
卒業する年の前年12月1日から申請受付が開始されます。例えば、2026年3月に卒業予定であれば、2025年12月1日から申請が可能です。 - 申請から入社までの流れ
- 内定(~卒業前年): 企業が留学生に内定を出します。
- 書類準備(10月~11月): 企業と留学生が協力し、申請に必要な書類を収集・作成します。
- 変更申請(12月~2月): 準備が整い次第、留学生の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署へ申請します。12月中の申請開始を強く推奨します。
- 審査(1~3ヶ月程度): 入管による書類審査が行われます。
※1月~5月は申請が殺到するため、通常より審査期間が長引く傾向にあります。 - 結果通知(3月~4月): 審査結果がハガキで本人に通知されます。
- 新しい在留カードの受領: 卒業後、大学の卒業証明書などを持って入管へ行き、新しい在留カードを受け取ります。
- 入社: 企業へ就職し、就労を開始します。
ケース2:卒業後に就職活動を続ける場合
卒業までに内定が得られなかった場合、「留学ビザ」のまま日本に滞在し続けることはできません。この場合、就職活動を継続するために、一時的に別の在留資格へ変更する必要があります。
- 「特定活動」ビザへの変更
大学を卒業した留学生で、在学中から継続して就職活動を行っている場合、「就職活動」を目的とする在留資格「特定活動」に変更することで、卒業後も日本に滞在し続けることが可能です。 - 「特定活動」ビザのポイント
- 在籍大学の推薦状が必須です。
- 在留期間は6ヶ月で、1回の更新が認められており、最長で1年間の就職活動が可能です。
- この期間中に内定が出た場合、改めて「特定活動」ビザから「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへの変更申請を行うことになります。
この方法はあくまで例外的な措置であり、企業側としては、在学中に内定を出し、卒業と同時に就労を開始できるスケジュールで進めるのが最も確実です。
許可の分かれ道!入管は何を審査するのか?
入管はどのような基準で審査を行うのでしょうか。「留学生側」と「企業側」の双方に設けられた要件を、それぞれ詳しく見ていきましょう。
【留学生側の主な審査基準】
- 学歴要件と業務内容の関連性(最重要)
- 大学(短大含む)卒業の場合:大学での専攻科目と、就職先で従事する業務内容に合理的な関連性があることが求められます。全く関連性のない業務(例:文学部卒で機械設計)の場合、なぜその業務に就けるのかを説得力をもって説明できなければ許可は極めて困難です。
- 専門学校卒業の場合:日本の専門学校で「専門士」の称号を取得した場合も対象となります。ただし、大学卒の場合よりもより密接かつ直接的な関連性が厳格に求められます。専門課程で学んだ内容と業務内容が直結している必要があります。
- 報酬の要件
雇用契約で定められた報酬額が、同じ業務に従事する日本人と同等額以上であることが絶対条件です。外国人であるという理由で不当に低い賃金を設定することは認められません。 - 素行の善良性
在留中の素行が審査されます。特に以下の点は厳しくチェックされます。- 資格外活動(アルバイト)のルール遵守:週28時間の制限を超えて働いていないか、風俗営業等、禁止されている職種で働いていないか。過去の違反は不許可の大きな要因となります。
- 納税義務の履行:国民健康保険や国民年金の支払い義務を果たしているか。
- 法令遵守:交通違反を含め、犯罪歴がないか。
- 入管法上の届出義務の履行
引っ越しをした際の住居地の届出など、入管法で定められた各種届出を遅滞なく行っているかも、誠実さを示す上で見られています。
【受入れ企業側の主な審査基準】
- 事業の安定性・継続性
留学生を採用し、将来にわたって安定的に給与を支払い続けられるだけの経営基盤があるかが審査されます。主に**直近の決算報告書(損益計算書など)**の内容で判断されます。赤字決算や債務超過の場合、事業計画書などで今後の改善見込みを具体的に示す必要があります。新設法人の場合は、今後1年間の事業計画書が実質的な審査書類となります。 - 事業の適正性
事業内容が適法であり、許認可が必要な業種であればそれを取得しているかなど、法令を遵守して運営されているかが確認されます。 - 雇用の必要性・相当性
「なぜ日本人ではなく、その留学生を採用する必要があるのか」という点を合理的に説明することが求められます。特に、留学生の専門知識や語学力を活かせる業務内容であることを明確に示す必要があります。例えば、母国との貿易業務のために採用する、大学で学んだIT技術を活かして自社のシステム開発に従事してもらう、といった具体的な理由が必要です。
誰が・どこで・何を?具体的な申請手続きと必要書類
申請できる人と申請場所
- 申請できる人:原則として留学生本人ですが、行政書士などの申請取次者が代行することも可能です。
- 申請場所:申請人(留学生)の住居地を管轄する地方出入国在留管理官庁です。
必要書類の完全リスト
提出書類は、受入れ企業の規模(カテゴリー)によって大きく異なります。ここでは、多くの中小企業が該当する「カテゴリー3・4」を前提とした標準的な書類を解説します。
【留学生本人が準備する主な書類】
- 在留資格変更許可申請書:証明写真(縦4cm×横3cm)を貼付します。
- パスポート及び在留カード:申請時に窓口で提示します。
- 卒業証明書または卒業見込証明書:在籍する大学や専門学校から取得します。
- 成績証明書:履修科目を確認し、業務との関連性を審査するために必要です。
- 履歴書:学歴・職歴を正確に記載します。
- 申請理由書(任意ですが強く推奨):大学での専攻内容、就職活動の経緯、入社後の業務内容、そして専攻と業務の関連性を自身の言葉で説明する重要な書類です。
【受入れ企業が準備する主な書類】
- 在留資格変更許可申請書(所属機関等作成用)
- 雇用契約書の写しまたは採用通知書の写し:職務内容、雇用期間、地位、報酬額が明確に記載されている必要があります。
- 会社の登記事項証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 直近年度の決算報告書(損益計算書・貸借対照表)の写し
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し:税務署の受付印があるものが必要です。
- 会社案内など事業内容を明らかにする資料:パンフレットやウェブサイトのコピーなど。
- 雇用理由書:なぜこの留学生を採用するのか、どのような業務に従事させるのか、その業務がいかに本人の専門性を活かすものであるかを具体的に説明する、申請の成否を分ける非常に重要な書類です。
※企業のカテゴリーが上場企業等(カテゴリー1・2)に該当する場合、上記のうち決算報告書や登記事項証明書などが免除され、手続きが大幅に簡略化されます。
これで安心!留学ビザからの変更でよくある質問(Q&A)
Q1. 内定さえ出せば、100%就労ビザは取得できますか?
A1. いいえ、100%ではありません。法務省の統計では、例年80%~90%台の許可率で推移しており、残念ながら毎年一定数の方が不許可になっています。不許可の主な原因は、やはり「学歴と業務内容の関連性が説明できない」ケースです。そのため、多くの企業では、万が一に備えて雇用契約書に「在留資格の変更が許可されること」を契約発効の条件とする「停止条件」を設けています。
Q2. 審査が長引き、4月の入社日までに許可が出ない場合は不法滞在になりますか?
A2. いいえ、すぐにはなりません。在留資格変更許可申請中は「特例期間」が設けられており、元の在留期間が満了しても、申請の結果が出る日または在留期間満了日から2ヶ月が経過する日のいずれか早い日までは、適法に日本に滞在できます。ただし、就労ビザが許可される前に入社して働くことはできません。
Q3. 専門学校卒業の場合、大学卒業と比べて不利になりますか?
A3. 不利というわけではありませんが、審査基準がより厳格になります。大学卒業の場合は専攻との「関連性」が審査されますが、専門学校卒業の場合は専門課程で学んだ知識・技術と業務内容が「密接に」関連していることが求められます。専門学校での学びが直接的に活かせる職務でなければ、許可は難しくなります。
Q4. 在学中のアルバイトで週28時間のルールを少し超えてしまいました。正直に申告すべきですか?
A4. 非常にデリケートな問題ですが、虚偽の申告は絶対に避けるべきです。入管は提出された資料以外にも様々な方法で調査を行う可能性があり、虚偽が発覚した場合は極めて深刻な結果を招きます。もしルール違反がある場合は、その理由や背景を正直に説明し、反省の意を示すなど、誠実な対応が求められます。状況によっては専門家への相談が不可欠です。
まとめ – 適切なビザ申請が、優秀な人材確保の第一歩
ここまで見てきたように、留学ビザから就労ビザへの変更は、単なる事務手続きではありません。留学生のこれまでの学びとこれからのキャリア、そして企業の事業計画が交差する、極めて重要な法的手続きです。
- 学歴と業務の関連性を明確に
- 申請のタイミングを逃さず
- 企業側の経営状況と雇用の必要性を客観的な資料で証明する
この大原則を理解し、企業と留学生が協力して周到な準備を行うことが、スムーズな許可取得の鍵となります。安易な自己判断で不許可となってしまい、採用計画が白紙に戻ってしまうような事態は、双方にとって大きな損失です。
当事務所のサポート
当事務所では、就労ビザに関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適なビザ戦略をご提案いたします。
- 就労ビザ取得の可能性診断
- 学歴と業務内容の関連性に関するコンサルティング
- 採用計画に合わせた申請スケジュールの策定
- 説得力のある雇用理由書の作成サポート
- 出入国在留管理局への申請手続き代行
「この留学生は採用できるのか?」その疑問を持たれた最初の段階で、ぜひ一度、私たちビザの専門家にご相談ください。お客様のグローバルな事業展開と優秀な人材確保を、ビザ申請の面から強力にサポートいたします。



