就労ビザ変更の基礎知識
目次
はじめに
アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。
「内定を出した留学生のビザ手続きはどうすれば?」「職種を変えて転職するが、ビザは大丈夫だろうか?」
外国人材の採用が活発化する中、このような「在留資格(ビザ)の変更」に関するご相談が急増しています。
就労ビザの変更申請は、単に書類を提出すれば許可される簡単な手続きではありません。新規取得時と同様、あるいはそれ以上に厳格な審査が行われます。特に、留学生から社会人になるタイミングや、職務内容が大きく変わる転職の際には、審査のポイントを正確に理解し、万全の準備をしなければ、不許可という厳しい結果を招きかねません。
万が一、ビザ変更が不許可になれば、内定は取り消しになり、その外国人材は日本で働くことができなくなります。これは、本人にとってはもちろん、採用活動にコストと時間をかけた企業にとっても計り知れない損失です。
この記事では、ビザ専門の行政書士として、就労ビザへの変更申請における重要な知識と注意点を、網羅的かつ徹底的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、どのような場合にビザ変更が必要になるのか、審査官が何を見ているのか、そして不許可リスクを回避し、スムーズに変更を成功させるための具体的な方法を、明確に理解することができます。
就労ビザ変更の基本|「在留資格変更許可申請」とは?
まず、一般的に「ビザの切り替え」や「ビザ変更」と呼ばれる手続きの正式名称は「在留資格変更許可申請」です。
在留資格とは、外国人が日本に滞在し、特定の活動を行うために法的に認められた資格のことです。例えば、「留学」ビザは勉強するための資格、「技術・人文知識・国際業務」ビザは専門知識を活かして働くための資格です。
この活動内容に変更が生じる場合に、現在持っている在留資格を、新しい活動内容に合った別の在留資格に変える手続きが「在留資格変更許可申請」です。例えば、大学を卒業した留学生が、日本の企業でエンジニアとして働く場合、「留学」という活動から「就労」という活動に目的が変わるため、この手続きが必須となります。
【パターン別】ビザ変更が必要になる3つの典型ケース
具体的にどのような場面で在留資格の変更が必要になるのでしょうか。ここでは、特にご相談が多い3つの典型的なケースをご紹介します。
ケース1:留学生から社会人へ(例:「留学」→「技術・人文知識・国際業務」)
これは最も代表的なパターンです。日本の大学や専門学校を卒業した留学生を企業が採用する場合、必ずこの手続きが必要になります。
「留学」ビザはあくまで学業を行うための資格であり、資格外活動許可を得たとしても週28時間以内のアルバイトしかできません。正社員としてフルタイムで働くためには、その職務内容に応じた就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)へ変更しなければなりません。
ポイント: このケースでは、本人の学歴(何を専攻したか)と、就職先での職務内容に密接な関連性があることが、審査における最大のポイントとなります。
ケース2:転職で職種が大きく変わる場合
すでに就労ビザを持って働いている外国人が転職する際も、ビザ変更が必要になることがあります。
例えば、同じ「技術・人文知識・国際業務」ビザを持っていても、前職で通訳として働いていた人が、転職してITエンジニアになるようなケースです。この場合、活動の基礎となる専門分野が大きく変わるため、在留資格の変更が必要となる可能性が高いです。
注意: このようなケースの審査は、実質的に新規のビザ申請に近い厳しい審査が行われます。転職先の事業内容や本人のスキルが、新しい職務内容に適合しているかを改めて証明する必要があります。
ケース3:被扶養者から就労者へ(例:「家族滞在」→「技術・人文知識・国際業務」)
就労ビザを持つ親や配偶者の扶養を受けて「家族滞在」ビザで日本に住んでいる方が、正社員として就職する場合もビザ変更が必要です。
「家族滞在」ビザでは、資格外活動許可を得てパートタイムで働くことはできますが、活動時間や内容に制限があります。日本人と同様にフルタイムで働くためには、就労ビザへの変更が不可欠です。
ポイント: このケースでも、本人の学歴や職歴が、就職先での職務内容と適合しているかが厳しく審査されます。
審査の最重要ポイント|審査官は「適合性」と「安定性」を見ている
在留資格変更許可申請において、出入国在留管理庁(入管)の審査官は、主に以下の3つの大きな視点から、提出された書類を厳しくチェックします。これら全ての要件をクリアすることが、許可を得るための絶対条件です。
在留資格該当性(新しい活動がビザの要件を満たすか?)
これは、**「これから行おうとする活動が、変更したいビザのルールに合っているか?」**という点です。これが最も重要な審査項目と言えます。
- 学歴・職歴と職務内容の関連性: 特に「技術・人文知識・国際業務」ビザへの変更では、大学の専攻や過去の職務経歴と、新しい仕事内容との間に論理的な関連性があることを、客観的な資料で証明しなければなりません。例えば、経済学部を卒業した人がプログラマーとして就職する場合、なぜその業務ができるのか、関連する資格や研修実績などを具体的に説明する必要があります。
- 専門性の要件: 職務内容が、専門的な知識や技術を必要とするものであることが求められます。誰でもできるような単純労働(例:工場のライン作業、店舗での接客、清掃など)が主たる業務であると判断された場合、不許可となります。
事業の安定性・継続性(雇用主の要件)
外国人本人だけでなく、**「雇用主である企業が、今後も安定してその外国人を雇用し続けられるか?」**という点も厳しく審査されます。
- 企業の経営状況: 企業の決算書(損益計算書・貸借対照表)がチェックされます。特に、債務超過であったり、2期連続で大幅な赤字を計上していたりすると、事業の安定性が低いと見なされ、審査が非常に慎重になります。その場合は、今後の改善見込みを具体的に示した事業計画書などの提出が有効です。
- 企業の信頼性: 社会保険に適切に加入しているか、税金をきちんと納めているかなど、企業として当然果たすべき義務を履行しているかも見られます。
個人の要件(安定した収入と素行)
「その外国人本人が、日本で安定して生活できるか?また、これまでルールを守ってきたか?」という視点です。
- 給与水準: 報酬額が、同じ職務に従事する日本人と同等額以上であることが大原則です。不当に低い給与は、専門的な業務内容であることに疑いを持たれたり、安定した生活が困難であると判断されたりする要因となります。
- 素行の善良性: これまでの在留状況が評価されます。特に留学生からの変更申請では、資格外活動(アルバイト)の上限時間(週28時間)を遵守していたかが厳しく問われます。過去のアルバイト超過が発覚した場合、不許可となる可能性が非常に高くなります。また、税金や年金、健康保険料の納付状況、交通違反歴なども審査に影響します。
【ケース別】これが危ない!ビザ変更が不許可になる典型的な5つのパターン
ここでは、実際に不許可となりやすい典型的なケースを5つご紹介します。ご自身や採用予定の外国人材が当てはまっていないか、ぜひチェックしてみてください。
- ケース1:学歴と仕事内容の関連性を説明しきれなかった
大学で観光学を専攻した留学生が、IT企業に営業職として就職するケース。単に「コミュニケーション能力が高いから」という理由だけでは不十分です。なぜその人材でなければならないのか、観光学で培った異文化理解能力がインバウンド向け営業にどう活かせるのか、といった具体的な職務内容と学歴の関連性を「雇用理由書」などで詳細に説明できず、不許可となりました。 - ケース2:留学生時代のアルバイト超過が発覚した
学業の傍ら、熱心にアルバイトに励んでいた留学生。しかし、夏休みなどの長期休暇期間以外で週28時間の制限を超えて働いていたことが、所得証明書などから発覚。在留資格で定められた活動範囲を逸脱していた(ルール違反)と判断され、不許可となりました。 - ケース3:就職先の会社の経営状態が悪く、安定性がないと判断された
設立間もないスタートアップ企業に就職。熱意や将来性はあったものの、提出された決算書が債務超過の状態でした。今後の事業の具体的な見通しや、安定して給与を支払い続けられる根拠を示す事業計画書を提出しなかったため、「事業の安定性・継続性」に疑義ありと判断され、不許可になりました。 - ケース4:給与が日本人社員に比べて不当に低かった
同じ部署で同じ業務内容の日本人社員の給与が月給25万円であるのに対し、外国人材の給与は月給18万円で雇用契約を締結。合理的な理由なく日本人と比べて報酬額が低いことは、差別的待遇と見なされ、不許可の大きな原因となります。 - ケース5:「短期滞在」ビザからの変更を安易に考えていた
観光目的の「短期滞在」ビザで来日した外国人が、日本滞在中に就職先を見つけ、そのまま就労ビザへの変更を申請したケース。「短期滞在」からの変更は、結婚など「やむを得ない特別の事情」がある場合にしか認められず、就職を理由とする変更は原則として許可されません。この場合、一度出国し、海外の日本大使館で改めてビザを申請し直す必要があります。
転職者採用の注意点|「就労資格証明書」の積極的な活用を
すでに就労ビザを持つ外国人を中途採用する場合、最も確実な方法は「就労資格証明書」を取得することです。
これは、転職後の新しい会社での仕事内容が、現在持っている在留資格で認められる活動の範囲内であることを、入管に事前に審査・証明してもらう制度です。
- メリット:
- 企業側のリスク回避: 「この外国人を雇用して法的に問題ないか」を公式に確認できます。「知らずに不法就労させてしまった」という最悪の事態を防げます。
- 更新時の手続きがスムーズに: この証明書を取得しておけば、次回の在留期間更新の際に、転職の妥当性についての審査が大幅に簡略化され、許可がスムーズに下りやすくなります。
転職は、ビザ更新時に不許可となるリスクが最も高いイベントの一つです。採用が決まったら、速やかにこの「就労資格証明書」の交付申請を行うことを強くお勧めします。
申請手続きと必要書類
申請のタイミング
在留資格の変更申請は、卒業や入社に合わせて計画的に進める必要があります。特に、留学生の卒業シーズンである1月~3月は入管の窓口が非常に混み合うため、審査に時間がかかります。卒業・入社が決まったら、できるだけ早く、理想的には3ヶ月前には準備を開始し、12月中~1月末までには申請を完了させるのが賢明です。
主な必要書類
提出書類は、雇用主である企業の規模(カテゴリー1~4)によって異なります。ここでは、最も多くの企業が該当するカテゴリー3・4(中小企業など)を念頭に置いた一般的な書類をリストアップします。
- 申請人(外国人本人)が用意する書類
- 在留資格変更許可申請書
- 証明写真(4cm×3cm)
- パスポート及び在留カード(提示)
- 最終学歴の卒業証明書(または卒業見込証明書)
- (専門学校卒の場合)専門士の称号を付与されたことの証明書
- (転職の場合)前職の退職証明書、源泉徴収票など
- 会社が用意する書類
- 雇用契約書または労働条件通知書の写し
- 会社の登記事項証明書
- 会社案内(パンフレットやウェブサイトを印刷したもの)
- 直近年度の決算報告書(損益計算書・貸借対照表)の写し
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(税務署の受付印があるもの)
- 雇用理由書(申請に至った経緯、職務内容と本人の専門性の関連性を説明する文書)
※上記はあくまで一例です。個別の状況により、追加の資料提出を求められる場合があります。
まとめ – 計画的な準備がビザ変更成功の鍵
就労ビザへの変更は、外国人材のキャリアと企業の事業計画にとって極めて重要な手続きです。
- 変更の必要性を理解する: 活動内容が変わるなら、必ず変更申請が必要。
- 審査のポイントを押さえる: 「学歴と職務の関連性」「会社の安定性」「本人の素行」が三大要件。
- 不許可パターンを学ぶ: よくある失敗例から学び、同じ轍を踏まない。
- 転職時は事前確認を: 「就労資格証明書」を活用し、リスクを回避する。
- 早期の準備と申請: 余裕を持ったスケジュールが成功の確率を高める。
これらのポイントを押さえ、計画的に準備を進めることが、変更を成功させるための唯一の道です。もし少しでも不安な点があれば、安易に自己判断で申請を進めるのではなく、専門家である行政書士に相談することをお勧めします。
当事務所のサポート
当事務所では、就労ビザへの変更申請に関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、最適なサポートを提供いたします。
- ビザ変更の可能性診断
- 学歴と職務内容の関連性に関するコンサルティング
- 説得力のある「雇用理由書」の作成サポート
- 企業の状況に応じた必要書類のご案内
- 出入国在留管理局への申請手続き代行
「この留学生、無事に就労ビザに変更できるだろうか?」その疑問を持たれた最初の段階で、ぜひ一度、私たちビザの専門家にご相談ください。お客様と、貴社で活躍する外国人材の輝かしい未来を、ビザ申請の面から強力にサポートいたします。



