就労ビザと学歴の関係(大学と専門学校の相違点)
目次
はじめに
アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。
「専門学校を卒業したのですが、就労ビザは取得できるのでしょうか?」
「大学卒と専門学校卒では、ビザの審査で有利不利があると聞きましたが、本当ですか?」
これらは、日本での就職を目指す留学生の皆様や、外国人材の採用を検討されている企業の人事ご担当者様から、私たちが日常的に受けるご質問の中でも特に多いものです。
インターネットで情報を探しても、「専門学校卒は審査が厳しい」「大学卒の方が有利」といった断片的な情報は見つかるものの、なぜそう言われるのか、具体的に審査の何が違うのかまでを正確に解説した情報は少ないのが現状です。その結果、不確かな情報に不安を感じたり、採用計画に支障をきたしたりするケースも少なくありません。
結論から申し上げますと、日本の専門学校を卒業して「専門士」または「高度専門士」の称号を取得すれば、就労ビザ(特に「技術・人文知識・国際業務」ビザ)の学歴要件を満たすことは可能です。しかし、大学(短期大学を含む)卒業者と比較して、審査の重要なポイントである「専攻内容と職務内容の関連性」の判断基準が大きく異なることは、紛れもない事実です。
この記事では、日々多くの就労ビザ申請を手掛ける専門家の視点から、大学卒と専門学校卒でビザ審査の何が、なぜ、どのように違うのかを、網羅的かつ徹底的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、学歴がビザ審査に与える影響の「本当のところ」を深く理解し、ご自身の状況や採用計画に合わせた適切な準備を進めることができるようになります。
大原則:なぜ就労ビザの審査で「学歴」がこれほど重要なのか?
まず、就労ビザの審査における根本的な考え方を理解することが、すべての基本となります。出入国在留管理庁(以下、入管)の審査官が最も重視しているのは、「申請人が、許可を受けようとする活動(=仕事)を、安定的かつ継続的に行うことができるか」という一点です。
これを分かりやすく言い換えると、「その外国人を採用して、申請された通りの専門的な業務を遂行できるだけの能力や素養があるのか?」という点に尽きます。
そして、この「業務遂行能力」を客観的に証明するための最も重要な要素の一つが「学歴」なのです。特に、外国人材の多くが取得を目指す在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、大学や専門学校で修得した専門的な知識・技術を活かして働くことを前提としています。
そのため、審査官は申請人の学歴(何を学び、どんな専門性を身につけたか)と、就職先で従事する予定の職務内容を照らし合わせ、「学んだ専門性とこれから行う仕事内容に合理的な関連性があるか」を厳しく審査します。この「学歴と職務内容の関連性」こそが、学歴要件における審査の核心であり、大学卒と専門学校卒で判断基準が異なる最大のポイントとなるのです。
就労ビザにおける学歴要件の基本
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するために、法律(出入国管理及び難民認定法)で定められている学歴要件は、以下の通りです。
- 大学を卒業し、学士または短期大学士の学位を取得していること
- 日本の大学・短期大学だけでなく、海外の大学・短期大学も含まれます。
- 日本の専修学校の専門課程を修了し、「専門士」または「高度専門士」の称号を取得していること
- ここで最も注意すべきは、学歴として認められるのは日本の専門学校に限られるという点です。海外の専門学校を卒業していても、原則としてこの要件を満たすことはできません。
- 上記のいずれかを満たさない場合
- 原則として、従事しようとする業務について10年以上(一部の業務では3年以上)の実務経験があれば、学歴要件に代えることが可能です。しかし、実務経験の証明は容易ではなく、新卒者には適用されません。
したがって、「専門学校卒」と一括りにするのではなく、「『専門士』または『高度専門士』の称号を取得できる、日本の専門学校を卒業しているか」が、最初の重要な分岐点となります。ご自身の卒業した(あるいは卒業予定の)専門学校がこれらの称号を付与する学校であるかは、必ず事前に確認する必要があります。
【最重要ポイント】大学卒と専門学校卒で審査はどう違うのか?
学歴要件の基本を満たしていることを前提に、いよいよ本題である「審査の違い」について解説します。前述の通り、両者の違いは「専攻内容と職務内容の関連性」に対する審査の厳格さに集約されます。
- 大学(短期大学)卒業者:関連性の判断は「比較的、柔軟」
- 専門学校卒業者:関連性の判断は「比較的、厳格」
なぜこのような違いが生まれるのでしょうか。それは、日本の学校教育法における「大学」と「専門学校(専修学校)」の目的・性格の違いに基づいています。
なぜ大学卒は「柔軟」に判断されるのか?
入管が大学卒業者の関連性を柔軟に判断する根拠は、学校教育法における大学の目的にあります。
【大学の目的(学校教育法より要約)】
学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
ここでのキーワードは「広く知識を授ける」です。大学教育は、一つの専門分野に特化するだけでなく、幅広い教養や関連分野の知識を身につけ、物事を多角的・応用的に捉える能力を養うことを目的としています。
この教育理念に基づき、入管の審査においても、大学で学んだ内容と職務内容の関連性は、ある程度大きな枠組みで判断されます。例えば、専攻した学部名と職種名が直接一致しなくても、大学の4年間で履修した科目全体を見て、職務に必要な知識や素養を身につけていると合理的に説明できれば、関連性が認められる可能性が高いのです。
【許可に繋がりやすい例:大学卒の場合】
- 経済学部 卒業 → IT企業でマーケティング職
- (説明)経済学で学んだ市場分析や統計の知識は、マーケティング業務に不可欠である。
- 文学部(国際文化学科) 卒業 → 貿易会社で海外営業職
- (説明)異文化理解や語学力、コミュニケーション能力は、海外との取引において重要な素養である。
- 法学部 卒業 → メーカーの人事・総務職
- (説明)労働法や契約に関する知識は、人事労務管理やコンプライアンス業務に直接活かすことができる。
このように、大学卒の場合は「専攻内容から培われた応用的な能力が、どのように職務に活かせるか」という視点で、関連性が柔軟に評価される傾向にあります。
なぜ専門学校卒は「厳格」に判断されるのか?
一方、専門学校卒業者の関連性が厳格に判断されるのも、同様に学校教育法上の目的が根拠となっています。
【専門学校(専修学校)の目的(学校教育法より要約)】
職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的とする。
専門学校の最大の目的は、特定の職業に直結する「実践的な職業能力」を育成することにあります。大学のように幅広く学ぶのではなく、特定の分野の専門知識と技術を集中的に学び、即戦力となる人材を養成することに特化しています。
この教育目的を反映し、入管の審査では、専門学校で学んだ専門分野と職務内容が、明確かつ直接的に関連していることが強く求められます。大学卒のように「応用すれば活かせる」といった間接的な関連性では不十分と判断されやすく、「学んだ専門知識・技術そのものを、業務で使うこと」が求められるのです。
【許可に繋がりやすい例:専門学校卒の場合】
- 情報処理科 卒業 → IT企業でプログラマー
- (判断)プログラミング言語やシステム開発技術を直接業務で活かすため、関連性は非常に高い。
- Webデザイン科 卒業 → 制作会社でWebデザイナー
- (判断)デザインソフトの操作技術やコーディング知識を直接業務で活かすため、関連性は非常に高い。
- 国際観光科 卒業 → ホテルでフロント・予約管理業務
- (判断)ホテル実務や旅行業法、語学の知識を直接業務で活かすため、関連性は高い。
【不許可リスクが高い例:専門学校卒の場合】
- 情報処理科 卒業 → 商社で経理事務
- (判断)プログラミングの知識と経理業務の直接的な関連性を見出すのは困難。
- 国際観光科 卒業 → IT企業で営業職
- (判断)観光の専門知識とIT製品の営業との直接的な関連性を証明するのは難しい。
このように、専門学校卒の場合は、学科名や履修科目と職務内容の間に、誰が見ても納得できるだけの強い結びつきがなければ、関連性なしと判断されるリスクが高まります。
【最新情報】2024年からの要件緩和の動き
深刻化する人手不足を背景に、政府は外国人材の受け入れを拡大する方針を打ち出しています。その一環として、2024年に関係法令が改正され、一定の要件を満たす専門学校卒業者について、従事できる業務の範囲を拡大する運用が開始される見込みです。これにより、これまで厳格だった専門学校卒の関連性判断が、大学卒に近い形で緩和されることが期待されています。
ただし、具体的な運用基準や対象となる専門学校の要件などは、今後の発表を注視する必要があります。現時点での申請においては、依然として上記のような厳格な判断基準が適用されていると考えるべきです。
専門学校卒業者が特に注意すべき実践的ポイント
ここまでの解説を踏まえ、専門学校を卒業して就労ビザを目指す方が、特に注意すべき実践的なポイントをまとめます。
- ①「専門士」の称号は取得できるか?
- 入学前に、その専門学校・学科が「専門士」または「高度専門士」の称号を付与する課程として文部科学大臣に認定されているか、必ず確認しましょう。認定校は文部科学省のウェブサイトで確認できます。特に、日本語学校の中には「専門学校」という名称でも、この称号を取得できないコースもあるため注意が必要です。
- ② 履修内容を客観的に証明できるか?
- 申請時には、卒業(見込)証明書や成績証明書に加えて、シラバス(講義内容の詳細な説明書)や、授業で作成したポートフォリオ(作品集)などを任意で提出し、「何を」「どれだけ深く」学んだのかを具体的に示すことが極めて重要です。学科名だけでは専門性が伝わりにくい場合、こうした補足資料が審査官の理解を助け、許可の可能性を高めます。
- ③ 就労ビザが用意されていない職種ではないか?
- 専門学校で学べる分野の中には、そもそも「技術・人文知識・国際業務」ビザの対象とならない職種があります。例えば、美容師、理容師、調理師(日本料理)、保育士、ネイリスト、エステティシャン、柔道整復師といった職種です。これらの分野で専門士の称号を得ても、原則として就労ビザを取得することはできません。(※調理師は中華・フレンチ等で「技能」ビザ、一部地域では特例あり)
- ④ 会社に「雇用理由書」で強力なバックアップをしてもらう
- 採用する企業側に、「なぜ大学卒ではなく、この専門学校卒の申請人でないといけないのか」「申請人が学校で身につけた専門的技術が、当社のこの業務にどのように不可欠なのか」を具体的に記述した「雇用理由書」を作成してもらうことが非常に有効です。これにより、申請人側だけでなく、受け入れ企業側からも職務との強い関連性を主張することができます。
【ケース別】これが分かれ道!学歴が関わる許可・不許可事例
ここでは、実際に学歴と職務内容の関連性が審査の重要な要素となった典型的なケースをご紹介します。
- ケース1:【許可】大学卒(商学部)→ 食品メーカーで商品企画職
- 申請人は商学部でマーケティングや消費者行動論を専攻。採用企業は、申請人が大学で学んだ知識を活かし、若者向けの新しい商品の企画・開発を担うポジションとして採用。大学での専攻内容と職務の関連性が合理的であると判断され、無事に許可されました。
- ケース2:【許可】専門学校卒(ゲーム制作科)→ ゲーム開発会社でCGデザイナー
- 申請人は専門学校で3DCG制作ツールやキャラクターデザインを集中的に学習。成績証明書に加え、在学中に制作した作品のポートフォリオを提出。学んだ専門技術が職務内容と完全に一致しており、高い専門性も証明できたため、スムーズに許可されました。
- ケース3:【不許可になりやすい】専門学校卒(ブライダル科)→ 不動産会社で賃貸営業職
- 申請人は専門学校で接客マナーやウェディングプランニングを学びました。しかし、不動産の賃貸営業に必要な宅建業法や物件知識との直接的な関連性を客観的に示すことが困難です。ホスピタリティ能力はアピールできても、専門知識の関連性が乏しいと判断され、不許可となる可能性が非常に高いケースです。
- ケース4:【不許可になりやすい】海外の四年制専門学校(IT専攻)を卒業
- 申請人は母国で4年間、高度なIT技術を学び卒業しましたが、その学校は現地の制度では「大学」ではなく「専門学校」に分類されていました。前述の通り、就労ビザの学歴要件として認められる専門学校は日本国内のものに限られるため、このケースでは学歴要件を満たさないと判断され、不許可となる可能性が極めて高いです。
まとめ – 自身の学歴を正しく理解し、計画的な就職活動を
就労ビザの審査と学歴の関係について、ご理解いただけたでしょうか。最後に重要なポイントをまとめます。
- 基本の理解: 就労ビザの審査では、業務遂行能力の証明として「学歴」と「職務内容」の関連性が最も重視される。
- 審査基準の違い: その関連性の判断は、大学卒なら「柔軟」に、専門学校卒なら「厳格」に行われる。これは学校教育法上の目的の違いに起因する。
- 大学卒の戦略: 専攻内容から培われた応用的能力が、職務にどう活かせるかを幅広くアピールする。
- 専門学校卒の戦略: 専攻した専門知識・技術そのものを直接活かせる職種を選び、その関連性を客観的な資料(シラバス等)で具体的に示す。
- 共通の注意点: 自身の卒業した学校・学科の正確な位置づけ(学位や称号)を把握し、それに見合ったキャリアプランを描くことが成功の鍵となる。
ご自身の学歴で希望の職種のビザが取得できるか不安な場合や、専門学校卒の外国人を採用したいが関連性の説明に自信がない場合は、安易に申請を進める前に、ぜひ一度、私たちビザの専門家である行政書士にご相談ください。
当事務所のサポート
当事務所では、就労ビザに関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様一人ひとりの学歴や経歴、希望する職務内容を丁寧にヒアリングし、最適なサポートを提供いたします。
- 許可可能性の診断
- 学歴と職務内容の関連性を論理的に説明する理由書の作成サポート
- シラバスやポートフォリオなど、任意提出資料の選定に関するアドバイス
- 企業ご担当者様への必要書類のご案内と雇用理由書の作成支援
- 出入国在留管理局への申請手続き代行
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