ワーキングホリデービザから就労ビザ変更の基礎知識
目次
はじめに
アイ・ビー飛鳥行政書士法人です。
ワーキングホリデー制度を利用して日本に滞在し、その魅力に惹かれて「このまま日本で正社員として働きたい」と考える方は非常に多くいらっしゃいます。実際に、ワーキングホリデー期間中のアルバイト先でその働きぶりを評価され、企業側から「ぜひ正社員として残ってほしい」とオファーを受けるケースも少なくありません。
しかし、ここに大きな落とし穴が存在します。ワーキングホリデーのビザ(在留資格)と、正社員として働くための「就労ビザ」は、全くの別物です。その違いを理解せず安易に手続きを進めようとすると、
- 「日本に滞在したままビザの変更ができると思っていたのに、一度帰国しなければならないと言われた」
- 「ワーキングホリデー中と同じ仕事内容では、就労ビザは許可されないと知らなかった」
- 「学歴が足りず、就労ビザの申請条件を満たしていなかった」
といった問題に直面し、キャリアプランが大きく頓挫してしまう可能性があります。最悪の場合、不法就労になってしまうリスクすら潜んでいます。
この記事では、日々多くのビザ申請を手がける専門家の視点から、ワーキングホリデーから就労ビザへの切り替えに関する全ての知識を網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただければ、ご自身の国籍や学歴でどのような手続きが必要になるのか、そして日本でキャリアを継続するために何をすべきかが明確に理解できるようになります。
基礎知識:ワーキングホリデーと就労ビザの根本的な違い
まず、なぜ手続きが複雑になるのか、その原因である「ワーキングホリデー」と「就労ビザ」の本質的な違いから理解しましょう。
ワーキングホリデー制度とは?
ワーキングホリデー制度は、二国間の協定に基づき、青少年が互いの国の文化や生活様式を理解することを目的とした特別な制度です。
- 在留資格の正式名称: 特定活動(告示5号)
- 主たる目的: 休暇、旅行、文化交流
- 就労の位置づけ: あくまで旅行・滞在資金を補うための付随的な活動
- 就労の範囲: 風俗営業等の一部を除き、職種や時間の制限なく自由に働ける(オープンワークパーミット)
- 在留期間: 原則1年(国により異なる)、更新は不可
- 年齢制限: 原則18歳~30歳
重要なのは、ワーキングホリデーは「働くこと」がメインのビザではない、という点です。
就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)とは?
一般的に「就労ビザ」と呼ばれるものの代表格が「技術・人文知識・国際業務」です。これは、専門的な知識やスキルを活かして日本で働くことを目的とした在留資格です。
- 主たる目的: 日本の企業等との契約に基づく就労活動
- 就労の位置づけ: 在留資格の根幹をなす主たる活動
- 就労の範囲: 許可された専門的・技術的な業務に限定される(単純労働は不可)
- 在留期間: 更新が可能であり、長期的な就労が可能
- 年齢制限: なし
このように、目的も活動範囲も全く異なるため、ワーキングホリデーから就労ビザへ移行するには、全く新しい在留資格の審査をクリアする必要があるのです。
【最重要】帰国は必要?直接変更が「できる国」と「できない国」
ここが最も重要なポイントです。ワーキングホリデーから就労ビザへ、日本に滞在したまま「在留資格変更許可申請」ができるかどうかは、国籍によって明確に定められています。
なぜ国によって扱いが違うのか?
理由は、各国と日本が結んでいる二国間協定の内容にあります。多くの国の協定には「滞在終了時に受入国を出国する意図を有し、かつ、滞在する間に在留資格を変更しないこと」といった趣旨の一文が含まれています。これは、「ワーキングホリデーはあくまで一時的な文化交流制度であり、終了後は一度帰国してください」という国同士の約束事なのです。
【直接変更できる5カ国】
この協定に在留資格の変更を禁止する条項が含まれていない、以下の5カ国の国籍の方のみ、日本から出国することなく就労ビザへの変更申請が可能です。
- オーストラリア
- ニュージーランド
- カナダ
- ドイツ
- 韓国
これら5カ国の方は、日本で就職先を決め、在留資格の要件を満たせば、ワーキングホリデーの在留期間が満了する前に、管轄の出入国在留管理局で「在留資格変更許可申請」を行うことができます。
【直接変更できない国(上記5カ国以外)】
フランス、イギリス、台湾、香港、スペインなど、上記5カ国以外の協定国の国籍の方は、原則として一度日本から出国しなければなりません。
日本に滞在したまま「在留資格変更許可申請」を行うことは認められていないため、ワーキングホリデーの在留期間が終了するまでに一度日本を出国し、改めて正規の手順で就労ビザを取得して再入国する必要があります。
「知らなかった」では済まされない非常に重要なルールですので、ご自身の国籍がどちらに該当するかを必ず確認してください。
【変更不可の方向け】一度帰国して再来日するまでの完全ロードマップ
「一度帰国が必要」と聞くと、がっかりしたり、手続きが大変そうだと感じたりするかもしれません。しかし、計画的に準備を進めることで、帰国期間を最短にし、スムーズに日本での就労を開始することが可能です。そのための賢い進め方を4ステップで解説します。
STEP 1:ワーキングホリデー期間中に就職活動・内定獲得
まず、日本に滞在している間に、就労ビザの取得を前提とした就職活動を行います。ワーキングホリデー中は就労制限がないため、様々な業界を経験できますが、就労ビザを取得するなら、後述する学歴や専門性と関連のある職種を選ぶ必要があります。無事に企業から内定を得て、雇用契約を結ぶことが最初のステップです。
STEP 2:「在留資格認定証明書(COE)」の申請準備
内定が出たら、企業に協力してもらい、「在留資格認定証明書交付申請(通称:COE申請)」の準備を進めます。COEとは、「この外国人は日本で行う活動内容について、入管法の定める在留資格の条件に適合しています」ということを法務大臣が事前に証明する書類です。このCOEがあれば、後のビザ発給手続きが非常にスムーズになります。
STEP 3:日本滞在中にCOE申請を行う
ここが時間短縮の最大のポイントです。COE申請は、申請人(外国人本人)が海外にいることを前提とした手続きですが、申請時点で本人がワーキングホリデーで日本に滞在していても申請は可能です。
ワーキングホリデーの在留期限が残っている間に、内定先企業や行政書士などを通じて日本の出入国在留管理局にCOE申請を行います。審査には通常1ヶ月~3ヶ月程度かかりますので、在留期限から逆算して早めに申請することが重要です。
STEP 4:COE受領後、一時帰国してビザ発給→再来日
無事にCOEが交付されたら、それを受け取り、ワーキングホリデーの在留期限までに一度母国へ帰国します。その後、母国にある日本大使館または総領事館に、交付されたCOEとパスポートなどを提出して査証(ビザ)の発給申請を行います。COEがあるため、大使館での審査は数日~1週間程度で完了します。
パスポートに新しい就労ビザのシールが貼られたら、晴れて日本へ再入国し、就労を開始することができます。
この手順を踏むことで、帰国後にゼロからビザ申請を始めるよりも、圧倒的に早く日本へ戻ってくることが可能になります。
最難関!就労ビザ(技術・人文知識・国際業務)取得の3大要件
手続きの流れを理解したところで、次に最も重要な「就労ビザの審査基準」について解説します。ワーキングホリデー中と同じ感覚で仕事を探すと、まず許可は下りません。
要件①:学歴要件
これが最初のハードルです。原則として、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 大学(短期大学を含む)を卒業し、学士または短期大学士の学位を取得していること。
- 日本の大学だけでなく、海外の大学も認められます。
- 日本の専門学校を卒業し、「専門士」または「高度専門士」の称号を取得していること。
- 【超重要】海外の専門学校を卒業していても、原則としてこの学歴要件には認められません。
- 学歴がない場合:10年以上の実務経験
- 従事しようとする業務(技術・人文知識分野)について、10年以上の実務経験があれば学歴の代わりとすることができます。ただし、この証明は非常に困難を極めます。
要件②:学歴と業務内容の関連性
学歴要件をクリアしても、次に「大学や専門学校で学んだことと、就職先での仕事内容がきちんと関連しているか」が厳しく審査されます。
【許可されやすい例】
- 大学で情報工学を専攻 → IT企業でシステムエンジニアとして勤務
- 大学で経済学を専攻 → 商社でマーケティング担当として勤務
- 日本の専門学校でホテル・観光科を専攻 → ホテルで外国人観光客向けのフロント・予約管理を担当
【不許可になりやすい例】
- ワーキングホリデー中に飲食店で接客をしていた → そのまま同じ店で正社員として接客業務を続ける
- 理由:飲食店のホール業務や調理補助は、専門的な知識を必要としない「単純労働」と見なされるため、就労ビザの対象外です。
- 大学で文学を専攻 → ソフトウェア会社でプログラマーとして勤務
- 理由:文学とプログラミングの間に学問的な関連性を見出すのが困難なため。
ワーキングホリデーで人気のあったレストランやカフェ、販売店の仕事の多くは、この「単純労働」に該当するため、同じ職場で継続して働くことが難しいケースが大半です。
要件③:受入企業の安定性と報酬
審査は外国人本人だけでなく、雇用する企業側も対象となります。
- 企業の安定性・継続性: 会社の事業が安定的であり、継続して雇用を続けられる経営状態かどうかが審査されます。赤字決算が続いていたり、設立直後で事業基盤が不安定だったりすると、審査は慎重になります。
- 日本人と同等額以上の報酬: 同じ業務に従事する日本人がいる場合、その日本人と同等額以上の給与を支払うことが法律で定められています。不当に低い賃金での雇用は認められません。
申請手続きの具体的な流れと注意点
申請のタイミング
就職先が決定し、雇用契約を締結したら、速やかに申請準備を開始します。特にCOE申請の場合は審査期間を考慮し、ワーキングホリデーの在留期限の少なくとも3〜4ヶ月前には申請できるのが理想です。
審査期間
申請から許可・不許可の結果が出るまでの標準的な審査期間は、1ヶ月〜3ヶ月程度です。時期や申請する入管、申請内容によって変動します。
在留期限が迫っている場合の「特例期間」とは?
直接変更が可能な5カ国の方が「在留資格変更許可申請」を行った場合、審査中にワーキングホリデーの在留期限が過ぎてしまっても、**申請日から最長2ヶ月間は適法に日本に滞在できる「特例期間」**が設けられています。これにより、審査結果を日本で待つことができます。
ただし、この特例は「変更申請」のみに適用され、「COE申請」は対象外ですのでご注意ください。
まとめ – 自己判断は危険!まずは専門家へ相談を
ワーキングホリデーから就労ビザへの切り替えは、多くの方が考えるよりも複雑で、厳格なルールが存在します。
- まず、直接変更できるのは5カ国(豪、NZ、加、独、韓)のみと心得る。
- それ以外の国は、日本滞在中に「COE申請」を進めるのが賢い選択。
- ワーホリ中の仕事がそのままできると思わない。「学歴と仕事の関連性」が最重要。
- 単純労働と見なされる業務では、就労ビザは絶対に許可されない。
これらのルールを知らずに準備を進めると、時間も労力も無駄になってしまいます。日本でのキャリアを真剣にお考えなら、まずはご自身の状況で就労ビザが取得できる可能性があるのか、どの手続きを踏むべきなのかを、ビザ専門の行政書士に相談することをお勧めします。
当事務所のサポート
当事務所では、ワーキングホリデーからのビザ切り替えに関する豊富な経験と専門知識を持つ行政書士が、お客様一人ひとりの状況に合わせて丁寧にサポートいたします。
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